2018年6月、パリ・ファッションウィークにてイザベラ・ステファネッリは、”ahnd” と題されたseason_VI ( 2019SS collection ) を発表しました。 彼女が積み上げてきたクリエイション、問いかけ続ける美意識の象徴でもある今シーズンのテーマ「ahnd」。
[a-h-nd]と発音することを意図されたこの一見、不可解な文字列はシンプルで力強く、そして同時に詩的で繊細な美しいタイトルです。
「hand」のミスタイピングがきっかけで生まれたこのタイトルは人の本能と理性の境界の曖昧さや偶然性、意識の枠から外れることによって生まれる美しさや揺らぎの中に命が持つ美しさを見出しています。 そして同時に独自の手法でファッションと工芸(クラフト)の狭間に身を置くようなクリエイションを続けるブランドの美学を雄弁に語っています。
物事の裏側に潜む美しさやエネルギーが、いつもそこに在りながら目を留めたときに突然現れるように偶然目にした、ミスタイプされた文字列は彼女というフィルターを通すことで、はじめて意味を持ちました。 そしてそれは1つに留まらず、ともにクリエイションに臨む人たちや支えてくれる人たちの「手」に感謝と敬意を想起させ、それらを通じることで生まれる不完全さが放つ美しさをブランドの掲げる揺るぎない美意識の一部となっていくのです。
偉大なる先人や自身の生き方に影響を与えた人たちへの敬意を込めてその名が付けられたアイテムが放つ魅力は、生地、デザインと構造、縫製仕様そして染色といったプロセスの関わりが生み出しており、それらの裏に潜むコンセプトに起因しています。 そのため、ここでは主に生地にフォーカスして説明文とさせて頂きたいと思います。